遺伝カウンセリング学・学ぶ
東京慈恵会医科大学大学院医学研究科医科学専攻修士課程遺伝カウンセリング学
本修士課程は、2024年4月に認定遺伝カウンセラーの養成のための設置されました。
我が国の認定遺伝カウンセラー専門養成課程としては、27番目の遺伝カウンセリングコースです。
専攻長メッセージ
認定遺伝カウンセラーは、新しい非医師の医療専門職です。
2005年から学会認定資格制度が始まり,我が国では2024年現在364名の認定遺伝カウンセラーが活躍しています。
本課程では、高度な専門知識を持ち、豊かなコミュニケーションが可能な人材を育ててゆきます。
私たちの生命の設計図であるゲノムを調べることで、疾患の正確な診断ができたり、健康管理や疾患の予防・治療が、今までよりずっと個人にあったものを選択できる時代がきています。
ゲノムや遺伝子、さらに遺伝学的検査という言葉は、まだまだ難解なイメージで理解されることがあります。
これから認定遺伝カウンセラーを目指している学生には、医師とともに個々の来談者への遺伝カウンセリングが可能なことはもちろんとして、ゲノムや遺伝子、病気との関係など遺伝医療を一般社会へ教育し啓発するプロとしても活躍してもらいたいと思います。
特徴
本学の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」に基づき、遺伝医療における高度な知識・技術に加えて、豊かな人間性とコミュニケーション能力、国際的視野、多様性を尊重する姿勢を兼ね備え、高い実践能力を有する遺伝カウンセラーを育成し、さらに、研究によって社会に貢献できる素養を身に付けることを目指します。
国際的な視野に立った知識と実践の習得
遺伝カウンセリングの発祥は米国であり、常に遺伝カウンセリングの臨床研究をリードしています。我が国の文化や社会的背景、医療制度の仕組みも理解しながら、遺伝カウンセリング関する教科書を原著の英語版を用いることによって、北米さらには国際的な遺伝カウンセリングにおける知識や状況を習得します。
また、英語による遺伝カウンセリングに関する論文を読み、海外の遺伝カウンセリングの学会に参加し、最新の情報を収集したり、海外の遺伝カウンセラー修士課程とのオンラインでの交流を図ります。
医療系バックグラウンドではない学生への対応
研究にも備えて医学の基本を再確認し、かつ最新の医学、医療の知識を学ぶための科目を用意します。1年次の必修科目とし、原則対面にて履修を行います。
人文系や生命科学系の学生には、その到達度に応じて補講や課題を通じて基本的な知識を習得できるように支援します。
多彩な領域の遺伝診療、
遺伝カウンセリングへの早期からの見学や陪席、
そして実習
本学附属病院遺伝診療部では非常に幅広い領域の遺伝診療・遺伝カウンセリングが行われています。1年次後期より、それらの外来の見学を行い、症例カンファレンスに参加します。また、課外活動として、難病キャンプでのボランティア、家族支援団体への参加を勧奨し、可能な範囲で参加して生活者の視点から遺伝性疾患について学びます。
充実したロールプレイ演習
遺伝カウンセリング演習や遺伝カウンセリング実践論、遺伝カウンセリング実習の際、ロールプレイを1年次より行いながら、ロールプレイ振り返り票による毎回のフィードバックを行い遺伝カウンセリングの理論から面接スキルなどを学びます。
このフィードバックや遺伝カウンセリング実習においては、教員との対話を重ねることによって豊かなコミュニケーション能力や多職種と協働する能力、多様な社会的背景、価値観など、ナラティブな側面を理解できる能力、さらには社会貢献への使命感を涵養します。
開設の経緯
遺伝情報を利用した医療は急激に拡大しておりますが、その患者が納得し家族全員の健康へも思いを巡らしながら享受するには、遺伝カウンセリングは必須であり、それを担う認定遺伝カウンセラーの育成は急務です。
知識・技術に裏打ちされた医学的情報の収集・伝達のみでなく、相談者(クライエント)とその家族の多様な社会的背景、価値観など、物語と対話(ナラティブ)な側面に配慮しながら信頼関係を構築できる遺伝カウンセラーの育成は、本学の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」にまさに合致しており、本学が果たしうる重要な社会貢献です。
さらに、本学附属病院等において建学の精神に沿った全人的な医療を進めるためにも、優れた遺伝カウンセラーを育成し、配置する意義は大きいものです。
以上から、本学の大学院医学研究科に医科学専攻修士課程を、2024年4月に設置し、遺伝カウンセラーの育成を行っています。
カリキュラム概要
3つのポリシー
1.入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
本課程のカリキュラムを修得でき、修了時に求められる能力を達成できる学生として、入学時に以下の人材を求める。
- 入学時に、学士相当の知識を有する者、特に人間科学系科目、自然科学系科目、医療系科目の修学に備えた知識を有する者
- 遺伝カウンセリングの実践、研究の遂行に必須である遺伝カウンセリングに関する論文 等を読み内容を理解できる英語力を有している者
- 医療専門職としてコミュニケーション能力、適性、倫理感、問題解決能力を有している者
- 将来、認定遺伝カウンセラーとして社会に貢献する強い意志がある者
2.教育課程の編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
- 医学や保健医療の基本的な知識、理論を学ぶため、基礎科目として「保健医療概論」「ヒトの解剖・生理学」「医療統計学」を配置する。
- 遺伝カウンセリングの基盤を学ぶため,遺伝医学系の専門科目として「基礎人類遺伝学」「臨床遺伝学Ⅰ」「臨床遺伝学Ⅱ」「遺伝性腫瘍・がんゲノム医療」「ゲノムバイオインフォマティクス基礎」を配置する。
- 遺伝カウンセリングの概念から知識・技術、倫理的側面を学ぶため、遺伝カウンセリング系科目として「遺伝カウンセリング概論」「遺伝カウンセリング演習」「遺伝カウンセリング実践論」を配置する。
- コミュニケーション能力、多様な社会的背景、価値観など、ナラティブな側面への理解を涵養するため、徹底したロールプレイを取り入れた科目を専門科目と遺伝カウンセリング系科目に複数配置する。
- 実習・特別研究科目の「遺伝カウンセリング実習」は、本学附属病院を中心とし、多彩な疾患の遺伝診療、遺伝カウンセリングに様々なクライエントがセッションに満遍なく陪席をする。陪席したのちは遺伝カウンセリング記録を作成し、教員からのフィードバックを得る。
- 実習・特別研究科目(遺伝カウンセリング研究)として、遺伝カウンセリングに関する研究を実践するための研究計画の立案や研究指導を行う「遺伝カウンセリング研究方法論」「課題研究」を配置する。
- 医学研究科医学系専攻博士課程の共通科目「医療統計学」「遺伝子操作研究法」は、本課程のディプロマ・ポリシーにも合致するため共用する。
- 遺伝カウンセリングに関する科目は、国際的な視野を重視するため海外の状況を学び、 原則教科書は英語原書を用いる。
3.卒業認定・学位授与に関する方針(ディプロマ・ポリシー)
- 保健医療に関する情報を多面的に理解し、科学的・論理的に考察することができる。
- 遺伝カウンセリングに関する歴史、定義、理論、面接技法などの専門的な知識・技術に基づいて遺伝カウンセリングを実施できる。
- クライエントとその家族の多様な社会的背景、価値観など、ナラティブな側面に配慮しながら信頼関係を構築し、高度の倫理観と使命感も持って遺伝カウンセリングを実践できる。
- 豊かなコミュニケーション能力を有し、多職種と協働できる。
- 遺伝カウンセリングにおける課題を論理的に分析し、その解決に必要な研究を実践できる。
- 国際的な視野に立ち、遺伝カウンセリングに関する文献や情報を得ることができる。
スタッフ
遺伝カウンセリング学は、東京慈恵会医科大学附属病院、遺伝診療部のスタッフと12名の専任教員が中心となって教育、研究、実習指導を行なっています。
遺伝診療部の専任スタッフ
遺伝カウンセリング学担当教員
- 川目 裕遺伝診療部
- 佐村 修産婦人科学講座
- 玉利 真由美分子遺伝学研究部
- 小林 博司遺伝子治療研究部
- 花岡 一成内科学講座(総合診療内科)
- 秋山 政晴小児科学講座
- 大橋 十也看護学科・看護学専攻
- 大石 公彦小児科学講座
- 本郷 賢一内科学講座(循環器内科)
- 吉田 清嗣生化学講座
- 宇和川 匡外科学講座
- 野木 裕子外科学講座
- 佐藤 正美看護学科・看護学専攻
- 竹内 千仙遺伝診療部
- 石橋 由朗教育センター
- 松島 雅人臨床疫学研究部
- 金子 実基子遺伝診療部
- 原田 佳奈遺伝診療部
医科学専攻修士課程遺伝カウンセリング学を目指す方へ
新しい専門職です。“path finder”としてチャレンジ精神と意欲のある方を求めています。共に学びながら、遺伝カウンセリングを社会に啓発しましょう。
大学院説明会、入試日程等の詳細は、以下のリンクを参照ください。
受験を希望される方は、願書提出前に必ず、学事課までコンタクトをお願いします。面談をおこないますが、複数回の面接をお願いすることもあります。
「遺伝カウンセラー」とはどのような職種であるかについて事前に調べておいてください。
以下のホームページは必ず閲覧してください。
「遺伝カウンセリング」や「遺伝医療」についてどのようなものか理解を深めておいてください。
可能であれば、日本遺伝カウンセリング学会や日本人類遺伝学会の学術集会への事前の参加を勧めます。
昼間帯に必修講義があり、また実習を重視したカリキュラムのため仕事を継続しながらの履修は難しく、学業に専念できる方を募集いたします。
入学試験については、英語のスコア、筆記試験、志望理由を含む面接試験を総合して判定します。